長野大輔個展 -交差する熱性-
長野 大輔 個展 -交差する熱性-
2020年10月17日(土)~10月25日(日)(会期終了)
12:00-18:00
会期中無休
作家在廊予定 17,18日
いつも手にする飯碗には、いったいどれだけの背景があるのだろうか。ドラマチックなストーリーなどはなく、日々の仕事に向き合う作家の姿が見えるだけかもしれない。ただ、その向き合い方や作家の追い求める形の無いものに、私たちは魅了されるのだろう。
長野大輔さんの仕事は多忙である。高知で薪窯を作ってからというもの余暇はない。素材はできる限り土地のものを使い、文旦や家で採れた藁を釉薬に利用する。薪窯も試行錯誤の作であり、毎月必ず火を入れ多量に作る。芸大を卒業後はどこかに所属することも、誰かに師事するわけでもなかった。唯一人で仕事をこなし、常に試行錯誤の連続だったであろう。辿り着いたスタイルはとても力強く尚且つ多作。今の長野大輔の器が出来上がった。
土は焼成によって不可逆な変化をもたらす。焼かれることではじめて「焼き物」となる。それは物理的にも言えるのだが、重要なことは素材を道具に変容させるということだ。自然素材を人の使う道具へと変える。時として特定の対象の為ではなく、作家は作るという行いそのものにのめり込み焼きあげるのだ。誰かの為や何かの為にと形を整えたところで、没入できなければ土を焼くような熱量を生み出すことはできない。
作家の熱が器物を焼く。土を固め釉薬を溶かすのは炎だが、器を焼くのは人である。人の熱にあてられ、炎に焼かれた土地の素材は、ただの飯碗であろうか。これこそが芯まで焼かれた「焼き物」と言えるのではないか。
この度Quwanでは長野大輔さんの個展“交差する熱性”を開催致します。一人の作家が創り上げた焼き物の器をぜひご覧ください。